「誕生日には、君の貞操を奪いに行くよ、鋼の」

口の端を吊り上げるような不敵な笑みが瞼に焼きついている。
おそらく、冗談だったのだと思う。否、そう信じたい。

「ば、馬鹿じゃねえの!」

と言っておいたけど、歪曲した弧を描いていた唇とは裏腹に、虎視眈々としていたあの目は、まじだった。
犯罪者よりも、精神異常者よりも、はたまたよちよち歩きの赤子よりも挙動が予測できないのは、変態だ。
間違いない。


Melancholic Birthday


この娑婆へ降り立ってから、365×15・・・5475日目の今日。
ああ、一日多いうるう年はとか吝嗇家みたいに瑣末なことを気にしては駄目だ。
おおよそ、5475日目の今日。何事も、寛容に、鷹揚に構えるのが吉。
とりわけ今日のように鬼気迫る日は尚更。

15回目の誕生日を迎えたオレは、ロックベル家で誕生日パーティーとやらを開いてもらうことになっていた。
主役はオレの筈なのに、居間を装飾しながら最も嬉々としていたのは、オレの弟とウィンリイだった。
そうして何故だか装飾中は居間に入ることを禁じられ、オレは不承不承別の一室に閉じ込められている。

『君の貞操を奪いに行くよ』

例のおぞましい科白が、脳内で何百回もエコーする。その度、妙な汗がタラリ。
い、いや、いくらあの常軌を逸脱した人間でも、そんなことはしないはずだ。
あんなの冗談だ、嘘だ、嘘も方便って、よく言うだろ?ん?それは違う?
完全に冷静を保っていられていない頭をぶんぶんと振り、雑念とか無意識的に反芻されてしまう言葉を駆逐しようと試みる。徒労に終わるけれども。
精神的疲弊が手伝い、はたと煮詰まった。
来ない。やつは来ない。来ないさ!来るわけない!その調子だオレ!
さすがの大佐だって、それぐらいの倫理観はまだ残っているはずだ。
たぶん。


ふー、と、か細くて長い、そして重い溜息を吐き出しながら、床に悄然と体育すわり。
顎の下あたりにくる膝に、ゴンと頭を乗せて、瞼を閉じ、ここでもうひとつ溜息。
下を向いたって幸運も逃げ道も落ちていないだろうから、しょうがなくもう一度少しかぶりを持ち上げる。
視界に入り込んだ床には、確かに幸運も、逃げ道もなかった。
けれど、あった。
幸運でもないけど、逃げ道でもないけど、事前知識収集のテキスト、が。



(なんだこれ?)

前方三メートルあたりに、無造作に放置されていた雑誌を手に取った。
どうやら月刊誌みたいな──マンガだ。
持ち主は九分九厘ウィンリイだろう、オレたち兄弟はマンガなんて久しく触った記憶さえないし。

(マンガなんて何年ぶりかなー)

先ほどまでの憂鬱なんてどこへやら。
うきうきしながら表紙をめくった。
巻頭を飾るマンガのタイトルは『熱愛』。
あまりに露骨で、

(う、うお)

と一瞬気が咎めたものの、昔はウィンリイの持っていたマンガをよく読んだので、それほどの遅疑もなく手を進めた。
扉絵には、ショーットカットの女と、長髪の男が並んで描かれている。
本編に入ると、突然展開は修羅場だった。既に起承転結の転って感じ。
月刊誌だから前回の続きからなんだろうな。まあいいか。

「・・・・・・」

まず、おかしいな、って思ったのは、女の一人称が『オレ』であることだ。
でもまあ、現実にもこういった俗に「ボーイッシュ」と称される女性はごまんと居るし、そういう設定なんだろうな程度でとりあえずスルー。

女が泣き顔で言う。
『なんで触ってくれないんだよ!』
男は黙っている。女が続ける。
『オレにさわってよ・・・!!』
男が重そうな口を開く。『後悔、するなよ』

わ。
手が止まった。
こ、この不穏な雲行きはなんだ・・・?
固唾を呑んでから、ページを捲る。

次のページに目を落とした瞬間、本を閉じた。
瞼も閉じた。
頭を整理した。
今のは、なんだ?

いや、見間違いだ。もし本当に見間違いなら、オレの目はかなりイカれていることになるけれど。
もう一度本を開く。見る。閉じる。
やっぱりおかしい。おかしいぞ?
突如展開はポルノな内容に突入する。でも、オレが驚いているのはそこじゃない。
な、なんで、女の下半身にあるまじきものが描写されているんだ、ろう、か?
お、女じゃないの?コレ・・・?
じゃあ長髪が女なのか!?
再度勇気をだして見る。
否、違う。
ど、どっちも男?それとも作者が超絶天然で描き間違えたとか?
現実を見ようとしないオレに、追い討ち。
閉じた状態のマンガ、当然表紙が前にきている。
とある英字の羅列を見て、愕然とした。
B、O、Y、S。
L、O、V、E。
複数形。
なんてエキセントリックな単語だろう。

ほ、ほもまんが?
しばしマンガから手を離した。
声が聞こえた。

『君の貞操を奪いに行くよ』

ほもまんがと、あわやほもになりかけの人間。
凄まじい邂逅だ。い、いやなるつもりは毛頭ないけど!
意味もなくあたりを見回してから、おそるおそる続きを読んでみることにする。

熱烈なキスを交わす二人。
『・・・ふ、ぅ・・・っ』と女男が漏らす。ショートカットの方だ。
すると胸の飾りを啄ばんでいた男の右手が淫猥な動きで女男の下腹部へとおりていき、そこにある、女男の──いわゆる、えーと、棒状のものを掴んだ。
きゅっ、という効果音が脇に書き添えられている。要らぬリアリティだ。
センセーショナルな展開にあわわわと目を回しそうになっているのはオレで、『あっ・・・ん!』と喘ぐ
のは女男、その女男の胸の紅を嘗め回しているのは男。
『や、ぁん・・・!あ、陸ぅ・・・欲し・・・!』
女男がそう哀願すると、陸と呼ばれた男は制服のズボンから一物を取り出す。
取り出し、て、どうすんの・・・?ど、どこに、どうすんの・・・?
男は女男の後ろ側にそれを宛がい、「ズッ」という生々しい効果音とともに内部へ進入しようとするけれども、女男が苦痛に顔を歪ませて『いっ・・・!』と呻いたことによっていったんそれは中断された。

(い、痛いの・・・!?)
親身になって心配するオレは傍から見たらかなりの阿呆だ。

『空、平気か・・・?』陸が問う。
『ん・・・へ、き・・・だから、はやく・・・きてっ!』
そう気丈に振舞う空と呼ばれた女男の眦には涙が浮かんでいる。
(な、なんで無理すんのー!!?)
オレはといえばもうにっちもさっちもいっていない状況だ。
がくがくと空の膝は小刻みに揺れている。そんな些細な描写にさえ翻弄される。
(けけけ痙攣してるし・・・!や、やめときなよ・・・!)ちょっと今のオレには、他人事じゃないからだ。

空の言葉を聞いて、陸は躊躇いを薙ぎ払うように潔く貫いた。
『あぁッ!い・・・気持ちい・・・よぉ・・・!』

はぁ・・・?オレは空の豹変振りに首を傾げる。
(さ、さっきは痛いって言ってたのに・・・!)

『ん!もっと・・・!りくぅ・・・』
なんなんだー!!
もうどこか遥か遠くへ思考回路が置いていかれている。
そしてオレは、不意に湧いた一つの疑念に愕然としていた。

も、もし、もし、もしも、万に一つ大佐が来るとしたら。
オレ、は、陸か空か、どっちなんだ・・・!?


ずっと頭で反芻されていた言葉には、「貞操」という言葉が用いられていた。
ていそうを、うばいにいくよ?
貞操?奪う?
処女?女?女役?
空?
ぎゃ!

(い、痛いのはやだ・・・!!)

オレは頭を抱えた。
待てよ?
オレが本当に空役だったら・・・。



「なんで触ってくれないんだよ!」

涙が滲んだ瞳で、オレが訴える。
大佐は無表情でこちらを見ている。

「オレに触ってよ・・・!」

ぎゅっと閉じた目から、落涙。
こちらに歩み寄ってきた大佐が言う。「後悔、しないな?」
その言葉を聞き取るか否かで、大佐がオレに唇を合わせる。

「・・・ふ、ぅ・・・っ」と、漏らすのは、オレ。
歯列をわって入り込んでくる舌にことごとく翻弄される。
そして大佐がオレの胸を弄って、オレの下腹部を弄って、オレの胸を今度は嘗め回す・・・。

(ぎゃーー!!)

そそそれは非常に芳しくない・・・!
お、オレの・・・!
また意味もなくあたりを見回してから、ちらりとTシャツの襟から中を覗いた。
そこにある朱色。

こここ、これを大佐が見・・・!さ、触・・・!?
あまつさえ、ななな、舐・・・!!?
そんな大層なもん付いてないっつーの・・・!!

立ちくらみを覚えた。
混沌の渦中にいる脳はブレーキが効かない。


「や、ぁん・・・!あ、大佐ぁ・・・欲し・・・!」

とか、言うの?オレが?
あはは。まさか。
ちゃんちゃらおかしくてへそで茶が沸かせますよ。
眩暈でぐらぐらしながら毀言を吐く。

大佐に穿たれながら、「あぁッ!い・・・気持ちい・・・よぉ・・・!」とか、言うの?オレが?
あはは。まさか!
騙されるもんか!
そう思ったのに、顔は熱いし、一部の臓器はどきどき言うわで、たいへんにオレは余裕がなかった。

(ま、まともなマンガはないのか!)

気を取り直して、一番後ろのページの目次を見る。
ずらりと整列したタイトルの群を見て、オレは諦念に駆られた。

『秘密の逢瀬は脱がしやすい服で』
『理事長様のイケナイお仕事』
『小児科病棟のキケンな夜』
『ロマンチストのアブナイ受難〜利己主義なご主人様〜』
などなど・・・。

(脱がしやすい服で・・・なんてベタな・・・はは)

オレが実におもしろくなさそうに笑うと、部屋のドアが開けられた。
マンガを背後に隠すオレの俊敏さは、金メダルだった。

「兄さん〜用意できたよ!」
「あ、ああ!わかった!今行く・・・」

アルが視界から消えるのを待ってから、よっ、と立ち上がった。

(・・・来るわけないさ!)

現実はマンガじゃない。



「誕生日おめでとう!!」

という、ウィンリイとアルの一声からパーティーが始まった。
綺麗に飾り付けられた室内や、目の前の大きなケーキと豪華な晩餐、心を浮き立たせる諸々の小道具を見ても、なんだかオレは注意散漫だった。
食べる?と言って差し出されたソーセージ。
先刻、空が陸のモノを銜えるといったようなエグいものを見てしまった手前、なんとなくそれを断った。
し、しっかりしろ、オレ・・・!
大丈夫だって!大佐だってそんな口約束、とうに忘れているに決まってる!
そういうやつなんだ、あいつは。



寝てしまおう。
そう思ったので。
裏釘を返すってやつで、念には念を、たとえ来ないとしても、だ。
まさか寝ている人間を襲ったりはしないだろ!っていう卓見がオレの中で導き出されたので、午後10時すぎ、早々とベッドに滑り込んだ。
さようなら今日。明日から15歳。今年もどうぞよろしく・・・。

10分後。
目は冴えたまま。
寝返りを50回ほど打った。
20分後。
睡魔は来ない。
寝返りを80回ほど打った。
30分後。
睡魔はオレより先に眠っているらしい。
100回目の寝返りを打ったとき、オレは已む無く上半身を起こした。

昼間は大佐の言葉が頭のなかを巡っていたけれど、今は違う。

『秘密の逢瀬は脱がしやすい服で』

このベタなタイトルがオレを咎めるように反芻され、まったく眠気が訪れてくれない。
自分の服装を確認する。
Tシャツ。
って、どうなんだ?

『秘密の逢瀬は脱がしやすい服で』

う、うるさいな!

『秘密の逢瀬は脱がしやすい服で』

わかったよ!
ベッドから這い出て、ウィンリイのいる隣室へ赴いた。



ノックをすると扉はすぐに開いた。
突然の訪問者に少し驚いている様子だ。

「ど、どうしたの?」

オレのただならぬ気配を感じ取ったのか戸惑いの色を見せるウィンリイ。
それもそうだ。
オレは何故か真っ赤になって俯いているし、双肩も強張っている。
正常な姿勢ではない。

「あ、あのさ・・・」
(・・・脱がしやすい服、なんて言えないよな・・・)

束の間の推考の後、言った。

「・・・パジャマない?前が、こう、ボタンになってるやつ・・・寝苦しくてさ」
「あ、あるけど・・・?男用はないよ?」

そう言って一度室内へ戻り、一着のパジャマを探し出し、渡してくれた。

「う、あ、有難う!」

音速で自室に戻り、壊れそうな勢いでドアを閉めた。
疑問符を浮かべているウィンリイが目に浮かぶ。

(か、借りちゃった・・・)

違う!その、情事に及ぶ気なんて1ミクロンもないけど!
念のためだ、念のため・・・!

(・・・なんの念だよ・・・)

自分で突っ込みながら、渋々とその寝巻きに腕を通した。
いや、奴は来ないよ。
きっと。



紆余曲折を乗り越えた、二度目の就寝に邪魔者はいなかった。
しばらくするとすぐに瞼はたゆんだ円環を描き出し、オレは夢への階段を駆け下りようとしていた。
だから、ゆっくりと開けられた窓にも、もちろん闖入者にも、気が付かなかった。

「無用心だな」

窓際に音源がいる。
ドクン、と心臓が跳ねた。
と同時に、身体もちょっと跳ねた。
え、嘘、まじ?
まじで、き、きやがった・・・!!
ええい、狸寝入りだ!

「・・・・・・・」

オレが沈黙を決め込むと、くすっと笑った声が聞こえた。

「寝ているのに体が跳ねるのかね?」

くそう・・・。
ああ、もう!
がばりと起き上がり、声を荒げた。

「な、なんでほんとに来てんだよ!」
「私は約束を必ず守ることで有名なのだよ」
「聞いてねえ!」
「・・・の、割には随分脱がしやすそうな服を着てくれているんだな」
「ちっげえ!!」

虚勢を張ってそう吼えるオレなどまるっきり無視し、大佐はこちらに歩を進めてくる。
コツ、コツ、コツ。
その足跡が少しずつ大きくなるにつれて、耳元の警鐘も大きくなっていく。
ドキ、ドキ、ドキ。
ひどく息がしづらい。喉の奥になにか詰まる感じだ。それはおもりのような鉛のような、とにかく重くて嫌な感じだった。
下手くそな呼吸でどうにか酸素を吸って、多忙な心臓へ栄養を与えてやる。

「な、なんだよ・・・!こっちくるな!変態!」
「変態とは失礼だな」

臆面もなくオレの領地──つまりベッドの上へ伸し上がってくる。
心臓にはよく破裂しないでいられるな、って逆に感心するぐらいだ。

「や、やだ・・・!!」

オレの手の甲に、大佐の手が触れた。
たったそれだけで面食らったオレは、パチンとその手を弾いてしまった。

「さ、さわんな・・・!」

ほら!
マンガみたいにはいかないだろ?ざまあみろだ。
なーにが『オレにさわってよ・・・!!』だ。ざまあみろ。
胸中だけは口先が達者で、泰然自若な態度は揺るがない。
だけどショートしそうな脳とか心臓とか、そういった緊張に弱い諸々は駄目だ。

「鋼・・・」
「やだっ・・・」

大佐の語尾を遮って訴える。
不要な事前知識の所為で、それはそれは多種多様な邪推や懸念が頭を交錯して目が廻りそうだった。

「だ、だって、オレ」

煙を出す脳に操られたオレは意味不明な弁明を始めた。

「ちゃ、ちゃんと、感じるかどうかとか、わかんないしっ・・・」
感度良好そうな空が脳に描き出される。

「み、見せられるような体じゃないしっ・・・」
陸の隆々とした体躯を思い出す。
大佐といえば呆気に取られている様子で、オレの弄舌に耳を傾けている。

「こ、声、とか・・・」
俯き加減で捲くし立てるオレの虚ろな目には、うっすらと滲む涙に透けて、恥じらいもせず喘ぎを漏らし続けていた空が映りこむ。
「な、にもできないし・・・」
銜えたりとか、できないの!マンガじゃないんだ!
指折り、自分の不甲斐なさと不可能なことを数えて、五本目の指で最後のくだり。

「絶対、つまんないよ・・・っ!」

しばし沈黙。それを破ったのは大佐の空気が抜ける音のような哄笑。
クスッ、と噴出されたその音にオレは耳聡く反応した。

「な、なんで笑・・・!!」

肩を揺らしながら声を殺して抱腹絶倒する大佐を目の前にして、オレはかなりなす術がなかった。
な、なんだよ・・・!人がせっかく忠告をしてやったっていうのに!
笑いが収まったのか、顔を上げて、言った。

「それは逆に誘っているのかね?」

ぬあー!ちっげえ!!
んなパラドックスな!

「ちが・・・っ」

火照るオレの頬にそっと手を添えて、囁く声は甘美だった。

「君は何も難しいことを考えなくていいのだよ。もし感じなければそれは私の所為だし、無理も演技もしなくていい。黙って受けていてくれればそれで」
「でも!」

異議を唱えようとしていたオレは、もう変な魔法にかかっていたんだと思う。

「本当はこうして、君が逃げずに、私の前にいてくれているというだけでも心底嬉しいのだが」

マジで恋する五秒前、5、4、
3、2、1、

「あわよくばその肌に、触れてみたいと思うのだよ」

なんちって。

そうしてごく自然に、いつの間にって感じでキスをして、でもやっぱりオレには心の余裕も準備も一切ないので、それだけでシーツを千切れるぐらい強く握り締めていた。

「っん・・・」

離れた唇、数センチだけ距離を置いた場所にある端雅なその顔が、

「誕生日おめでとう」

とオレに囁きかけた。
言葉につまったオレは(というより心臓は痛いしあまりに息はしずらいしで、喋れなかった)おぼろげに、

(きっとこんな風にこんな事をこんな奴に言われたら、女性はみんなメロメロなんだろうな・・・)

と考えていた。
メロメロだったのは女性だけじゃないけど・・・ね・・・。
って、前言撤回!

今度は首筋に口付けてきた物体に思わず、オレは漏れそうになったなんらかの声を押し殺した。

「・・・!」

ちゅく、とオレの顎の斜め下あたりから音がする。
しかしながらそんなことに気を取られてはいられなかった。
折角ボタンがあるのに、パジャマの下の裾から差し入れられてきた手の、ひやりとした冷気とか穏やかじゃないオーラにビクッと身体を震わせる。
暗中模索するその手が探していた一点を、細長い指が掠めると、再び喉まできた<<なんらかの声>>をどうにかまた押し戻す。

「・・・っ!!や、だ・・・!」

オレは固く瞼を閉じてしまったので、大佐の舌が自分の身に迫ってきていることに気付かず、突如その胸の朱に感じた、ざらりという未知の感覚に、

「ひゃ・・・あっ!」

という、とうとう外界へ出てしまった<<なんらかの声>>を聞いた。
オレは泣きそうな思いでパッと口を両手で塞ぎ、おそるおそる大佐の顔を見た。
大佐はにやっと笑っていた。

「ほら、簡単」

馬鹿!









15歳の誕生日プレゼントの収穫は以下。
おいしいケーキと豪華な食事、親しい人間たちのお祝い、新しい本を何冊か。
未成年だけどほんのちょっとアルコール入りのシャンパン。
あと、
たくさんのキス。などなど。

だけど多分、奪われたものの方が、多い。
しかも大切なものばかりだ。
あの馬鹿!大っ嫌いだ!
まったく・・・。


それではみなさん、ご唱和願います。
今年も一年よろしくね。
メランコリックバースデイに、乾杯!



END






久しぶりな短編!
突発的に書きたいなあ〜と思って書いたもの です・・!
っつかエドとロイの二人称が、「大佐」と「鋼の」で・・!
なんだか・・しっ新鮮・・!ブルブル(妙な感動

ウィンリイが腐女子ですみません・・orz